SSってなんだよ!

俺の中では「スクリーンショット」なんだけど?

じゃなくて、「ショートストーリー」なのか「ショートショート」なのか。

これらの違いは?

とか悩みながら、ちょっと思いついたネタを書いたので、唐突に投稿。

例のADVの世界観でお送りします。

屋上で靴を投げる少女(本文)

俺とレーベはビルの屋上にいた。

空には以前と変わらぬ青い空。白い雲。

そして……見つけた。飛行する物体。

「あれは、メンガーの無人機ですね」

偵察しに来たのか、爆撃しに来たのか。

無人機はそれほど高くない高度を飛んでいる。

レーベはそれに狙いを定める。

高く右手を上げ、勢いよく振り下ろすと、光の線が刃のように縦に伸び、飛び出していった。

それは目にも留まらぬスピードで空高く飛んでいき、みるみる無人機に迫る。

そして、トランプの手裏剣でキュウリを切断するように、無人機は真っ二つに……

ならなかった。

「…………」

「魔法が効かないようです……物理的な攻撃じゃないとだめなんですね」

かつて魔法は軍事的に万能といわれたが、近年では魔法科学の発達によりそれを無力化する技術も進んだのだ。

しかし物理的な攻撃と言われても、銃なんて持ってないし。

いや、銃があっても無人機なんか落とせないだろう。

「えっ?」

レーベはおもむろに靴を脱ぎだした。それも、両方。

おそらく20センチほどしかない、小さな白いスニーカーを両手に持つレーベ。

それを、

「投げた!?」

右手、左手と、靴を空に向かって力いっぱい投げるレーベ。

舞い上がった靴は途中で回転を止め、ジェットのような青い炎を噴き出しながら徐々に加速、まっすぐ無人機に向かっていく。

すぐに靴は見えなくなり、見えるのは噴き出す炎だけ。

やがて、地上から見てもわかるほどの高速になった。

無人機はそれに気付いたようで、フレアを放出する。

でも無駄だ。靴はミサイルじゃない。

フレアに欺かれることなく、靴は無人機を捉えるのだ。

「行っけぇぇええっ!!」

…………。

「やったか……?」

「外しました……」

「えーー……」

無人機は向きも変えず、飛行を続ける。

何となく俺もその気になっていたが、あれは靴だ。

靴で飛行機を落とすなんて、そんな……

「えっ」

レーベは今度は、靴下を脱ぎ始めた。

まさか――

クルー丈の短い靴下をそれぞれ結んで、一応丸い形にしたものを、レーベはまた空に向かって放り投げた。

2個の靴下ボールはジェットを噴き出しながら加速し、再び無人機を狙う。

「今度は外しませんっ」

無人機はまた、フレアを放出した。

一定の大きさと速度をもつ物体が接近すると、あの無人機はそれをミサイルだと判断するようだ。

しかし、靴下ボールにフレアは無意味だ。

そのフレアは、お前の人生(?)のついの花火だあ! 華麗に散れぃ!

…………。

「あっ」

無人機のエンジンが炎を噴き出した。

「エンジンの吸気口を狙いました」

「すげぇな」

なるほど、バードストライクの要領か。

あれでは、メンガーの基地への帰還は不可能だろう。

でも、今すぐ墜落することもない。

「どうする――」

「すみません、これを預かってくださいますか?」

レーベはパーカーのポケットから携帯を取り出し、俺に預けた。

「えっ……って、ちょ――」

俺は言葉を失った。

レーベは向こうを向くと、躊躇なく着ていたパーカーのファスナーを開け、脱ぎ始めた。

パーカーの下は白いキャミソールで、華奢な肩や細い腕は眩しいほど白く、俺は思わず目を逸らした。

レーベは困惑する俺をよそに、パーカーの裾を結び、丸めてから袖を巻きつけてさらに結び、団子状にした。

そして、大きく振りかぶってそれを空に投げた。

今回ばかりは俺も呆気にとられ、言葉も出ない。

パーカーボールが加速する。

いっそう大きな炎を噴き出し、見えるのは徐々にその炎の煌めきだけとなる。

俺たちのほぼ真上に差しかかった無人機は、無意味にフレアを放出し続ける。

パーカーが無人機に近付く。

どうだ…………?

「お!」

「やりましたぁ!」

無人機は小さな爆発を起こした。

そして、よく見ると左主翼が脱落している。

「やったな!」

そう言ってレーベを見たが、レーベは変わらず上半身キャミソールという眩しい格好で、俺は目を背けた。

「やりましたよ!」

レーベは全く気にする様子もなく、嬉しそうにこちらを向いて飛び跳ねた。

「服、どうするんだよ……」

「服……は着てますよ?」

レーベは笑顔で答えた。

裸でもないし、彼女的には問題ないらしい。

「でも……投げた分は、もう着られませんね……」

レーベは少し残念そうに言った。

「あ、あぶないっ……です!」

レーベの声に慌てて上を向くと、脱落した無人機の主翼がちょうど俺たちのところに落ちてくるところだった。

ガシャンと大きな音がして、主翼は俺たちの頭上に張られたバリアーに当たり、砕け散った。

レーベが守ってくれたのだ。

敵に分析されないように、墜落した部品は粉々に砕けるようになっている。

一方、本体のほうは黒煙を上げ、大きな円を描きながら、遠くへ遠くへ墜落していく。

「あっぶねー……」

偶然だろうが、ちょっと運が悪すぎるのではなかろうか。

屋上の床の、バリアーの範囲外には小さな主翼の破片が一面に散らばっていた。

「……帰りましょう」

レーベは歩き始めた。しかし……

「……っ」

「お、おい!」

レーベはふらついて、座り込んでしまった。

「大丈夫か?」

あれだけいろんなものを投げて、疲れてしまったのだろう。

俺には何もできなかったから。

「疲れました……でも大丈夫です……」

俺は手を差し出した。

「すみません」

レーベは俺の手を取ってゆっくりと立ち上がった。

「乗れよ」

俺は少し屈んでレーベに背中を向けた。

俺にはこれくらいのことしかできないけど。

「えっ、そ、そんなっ……」

レーベはパーカーを脱いだ時とは打って変わって恥ずかしそうな顔をした。

俺的には、トワエを何度か背負ってやったりしたこともあるし、それほど抵抗はなかったのだが。

「肩を貸していただければ……」

「そうか?」

レーベを肩に掴まらせる。

「ありがとうございます」

そしてゆっくりと歩きだす。

レーベは俺の後ろに寄り添っている。

ジャリ、という音がして、足元を見るとさっき散らばった無人機の破片だった。

俺はすぐに立ち止まった。

「ほら……裸足で破片踏んじゃ危ないから」

「そ……そうですね……」

振り向くと、レーベはしおらしく言った。

「一応聞くけど、飛べる?」

「少し休めば……」

「じゃあ乗れ」

俺はもう一度、少し姿勢を低くした。

「……すみません」

レーベは観念したように、俺に体を預けた。

「よいしょっ」

思った通り、レーベはトワエよりもずっと軽かった。

身長の低さもそうだが、中に入っているものが、普通の人間とは何か違う――そんなふうにさえ感じられる。

ちっとも太くない太ももを支え、足音をジャリジャリと立てながら、俺たちはこの屋上をあとにした。

日はだいぶ西に傾いていた。

(おわり)

あとがき

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創作勢の方よろしく!

これからちょっとずつこういうのを書いて、練習するか……

マリオメーカーの合間に……