ああ、最近は活動っぽいことをあんまりしてないなー。

とか思いながら、また超短編を書いてみた。

今回は「例のアレ」の二人のヒロインのお話。

二人の部屋

「あぁ〜〜っ! 忘れてたぁ!」

ソファに座っていたトワエが突然、奇声を発した。それは午後10時、ちょうどミラエがシャワーを済ませ、パジャマ姿で脱衣所から出てきた頃だった。

双子の姉妹である二人は、寮と呼ばれるマンションの一室で共に暮らしている。

「どうしたの、大声なんか出して」

ミラエは胸のあたりまである髪をタオルで拭きながら、のんびりした口調で尋ねた。

「宿題だよ、宿題!」

トワエは今カバンから取り出した印刷物を振りながら、慌てた様子で答えた。

「どうしよう、これ、明日提出だよー……」

ミラエはトワエの頑張りに期待しつつ、黙って再び脱衣所に引き上げようとした。

「ミラエ、手伝って?」

トワエは甘え声で、すかさずミラエを呼び止めた。

当然ミラエもそう言われることを予期していたので、どのように対応するのかも考えていた。

「手伝うって、またわたしに全部やらせるつもりでしょ。今度はそうはいかないからね」

ミラエとしては、かなりきつく言ったつもりだった。しかし、「また」や「今度は」といった言葉が結末を物語っているようだった。

「いや〜、そうなんだけどさ。だってわかんないんだもんね……」

トワエは困った顔をした。これはわかりやすい演技だった。

「自分の力でできるところまでやってみて、どうしてもわからない部分があったら教えてあげるけど……」

ミラエは当然のことを言った。

「全部わかんないよ〜」

トワエは予想通りの返事をした。

トワエは確かに成績があまり良くないのだが、成績が良くないからいつも助けを求めているのか、いつも助けられているから改善しないのか。

「ミラエが手伝ってくれないなら仕方ない……」

トワエは諦めたように言った。

「じゃあ今からカインの部屋に行って手伝ってもらおうっと!」

そう言うとトワエは勢いよく立ち上がった。

カインは二人の部屋の一つ下のフロアに住む、幼馴染みの少年だ。

「ちょっと、だめ! もうこんな時間なんだから」

ミラエは慌てて制止した。

「カインならまだ起きてるよ」

「そういう問題じゃなくて……」

カインはいつも日付が変わるまで、ゲームとかパソコンをしていると言っているが、夜10時に部屋を訪ねるのはミラエにとって許しがたい、常識外れの行為だった。

「だってー、ミラエがー、手伝ってくれないんだもーん」

ミラエは困り果てた。

「だから、行ってくる」

「待って! ……わかったよ、わたしが手伝うよ、もう……」

結局今回もミラエが折れることとなった。

「えへへ、ありがとう」

トワエは満面の笑みで言った。

その笑みにはどこか、勝ち誇ったような表情すら垣間見え、ミラエは自分の意志の弱さを改めて痛感するのだった。

そしてミラエは心の中でひとつ溜め息をついた。

 

* * *

 

「とりあえず、その紙を見せてよ」

「うんうん!」

トワエは宿題の内容が書かれた印刷物を渡そうとした。

「って、ミラエ! まだ髪乾かしてないじゃん! 早く乾かしなよ!」

「えっ……あとで乾かすよ……」

ミラエは髪の手入れに関しては無頓着だった。しばらく放っておいて、自然乾燥である程度乾かしてからドライヤーを使う、というずぼらな一面があった。

普段はまめでよく気が付く少女なのだが。

「もう……ミラエはそういうところ、もうちょっと気を配るようになればいいのに」

トワエは自分の長いポニーテールを手でなびかせながら言った。

ミラエは今は髪を下ろしているが、普段はツインテールにしている。しかし、髪型に関して特にこだわりはなく、ただトワエとは違う髪型に、ということだった。

「トワエはどうして、髪だけはそんなに丁寧に手入れしてるんだろうね」

ミラエは半分感心して、もう半分は呆れながら言った。

「髪だけ、じゃないよ!」

トワエはすぐさま否定した。

「でも、ミラエももっと髪のこと、しっかりしたほうがいいよ」

トワエの髪の長さはお尻まである。

その長さをキープするには、日々の入念な手入れが不可欠となる。

そうやって手に入れた長く美しい髪を、トワエは大事にしている。

「ほらほら、待っててあげるから、早く乾かしてきなよ」

トワエは得意げに言った。宿題を手伝ってもらおうという立場をすっかり忘れているようだ。

「うん……」

ミラエも何となく言いくるめられたような違和感を感じていたが、その違和感の正体に気付くことはなかった。

あとがき

例のアレのストーリー的には、主人公であるカインの部屋が描かれることが多くて、ミラエたちの部屋はほぼ描かれないから、今回はそっちにスポットを当ててみた。

そして本編は主人公の一人称視点(ただし文体は三人称)で描かれるから、他の人だけのシーンも基本的にないんだよね。

今回のは三人称視点で書いてみた。

地の文が少なくて会話文が多い、ってのは今時のラノベの特徴ともいわれてるけど、どうなのかな。

地の文が連続する時って、何か新しいものを説明する時だったり、人物の自分語りとか心情の変化を描く時だと思うから、今回のようにごく普通の部屋で二人が掛け合いをするときは自ずとこうなるよね?

そこをもっとたっぷり描写しろって言われたなら、ごめんなさい。

以下、本文の注釈など。

ミラエとトワエの容姿については、メインサイト側の某ページに俺が(数年前に)描いたイラストがあるから、そっちを見てくれ。

どっちも赤髪で、ミラエがツインテール、トワエがポニーテールとなっている。

本文にもあるように、二人は双子の姉妹。

ちなみにトワエが一応姉。妹より優れた姉など存在しない。

毎日幼馴染みの四人組(男2、女2)でカインの部屋に集まって、一緒に夕食を食べたり宿題をしたりしている。

しかし、カインとミラエがクラスメイトであるほかは互いに別のクラスであるため、宿題も異なり、今回のようにみんなでやるはずの宿題を忘れてしまうということもままある。

みんなでやれば、そのときにカインが手伝ってくれるわけだ。

さて、本文では二人の性格が描かれている。

ミラエは基本的にしっかり者だが、おっとりしていて押しに弱いところがある。

トワエは子供っぽいが甘え上手で、今回のようにミラエを言い負かすこともある図太さと気の強さももつ。

いや、トワエって病弱なんじゃ……と記憶力のいい人は突っ込むかもしれないが、病弱でも口は達者なのさ。

むしろそこが甘え上手になった理由の一つでもある。

双子キャラでもどちらを姉(兄)にするかはしっかり考える必要がある。

見た目で判断される姉/妹、「らしい」性格、身長、体型……

ポニテは大人っぽく、ツインテは子供っぽいイメージ、とか。

それらを見事に逆逆に配置しているのがこの姉妹である。

キャラクター紹介は例のアレの作品紹介ページにもあるが、あのページではかなり短く書いているので、そこで書ききれないことを徐々にこういうSSの形で紹介している。

うん、キャラクター紹介をあまり長々と書くのは良くないって、どこかで習った気がする。

……ここでは、いいんだよ。これは作品であって、なおかつこれから作品(完成品のこと)に触れようとするユーザーが先に触れるような場所には置いてないんだから。

タブンネ。

おわりに

感想とか指摘とか、くれてもいいのよ?